園芸療法



園芸療法

 

植物を通じて感じる
生命もダイナミズム

       園芸は、花や果実などの収穫を
       与えてくれるばかりでなく、私たちの感情や体や
       五感に多くの恵みをもたらしてくれる。
        土に触れ、植物ち向き合うことのすばらしさを 
       見直そう。

植物に触れると
心安らぐのはなぜ?

花や緑に触れると気持ちが安らぐ。
また、ガーデニングで汗を流すことは、
心地よい疲労感と爽快感をもたらす。

こうした園芸の効用を積極的に活用して、高齢者やさまざまな
障害のある人の心身の機能回復や生活の質の向上を
図るのが『園芸療法』だ。

日本の園芸療法のパイオニヤのひとり、グロッセ・世津子さんによると、
「園芸療法が本格的に始まったのは第2次世界大戦戦後のアメリカにおいて。
後遺症に苦しむ退役軍人に大きな効果を発揮したことから、主に
心身のリハビリを目的として行われてきました」

日本でもここ数年、急速に注目を集めるようになり、
福祉施設や病院、学校などで実践されているほか、
地方自治体などからの関心も高まっているという。



「園芸」というのは、きれいな花を咲かせたり、
おいしい果実を実らせたりことが期待されるが、
「園芸療法」は、土を耕し、種をまき、育て、
収穫し、それを活用するという、
園芸活動そのものに意味がある。



体の動きは筋肉を鍛え、リバビリに応用できる。
また、植物に触れることで心がいやされ、植物を育てる責任感は
生きがいにもつながる。



なかでも、園芸療法の最も大きな効用は、生命の
ダイナミズムに触れることだと、グロッセさんは言う。



「例えば、一生懸命世話をした植物が枯れてしまうことがあります。
その時、私たちは自分の意思と力を超えた、目に見えない
存在を感じるでしょう。
また、枯れかけていたと思っていた花が命を吹き返した時、
生命の力強さを目の当りにします。そして、そのことが
こちらの生きる力にもつながってきます」

植物と接することで安らぎを感じる理由について、
グロッセさんは、植物は人間をジャッジ(判定)しないからだと
説明する

「私達は小さい時から、期待されたり、評価されたりして生きて
きます。そして、他人の視線に合わせて自分を演じ、
そのために疲れたり、自信を失ったりすることがあります。
でも、植物だけは私が何者であろうと、どんな状況に置かれ
ようと、関係なくそこにある。私達を値踏みしない植物との
関係のなかで、私たちは安心感を得るのだと思います」

植物はただ見るだけでも気持ちよいものだが、植物について
学ぶことで知識欲が満たされ、収穫物を活用してものを
創作する喜びを得ることもできる。
もちろん、食べる喜びも。

「植物を育てる、収穫する、利用する、という一連のプロセスを、
私は(大地の恵を分かち合う)と呼んでいます。

植物は、あなたのケアの結果として、収穫物を与えてくれる
ばかりでなく、
あなたの感情や体や五感に多くの恵を差し出してくれます。
皆さんも、ぜひ大地の恵を思う存分楽しんでください」


JRジバング倶楽部・「大人の休日」より
(グロッセ・せつこ)東京農業大学客員教授。
園芸療法の普及を目指し「HT(園芸療法)ネットワーク」を主宰。