Beethoven
(1770-1827)


◆ヴァルトシュタイン伯爵の主題による4手のための8つの変奏曲 WoO.67 (1792)
 ベートーヴェンは、ボンの宮廷オルガニストに着任したネーフェにバッハの「平均率クラヴィーア曲集」を教材としてクラヴィコード、作曲を師事した。すぐに助手となり、宮廷第2オルガニストとなるが、この頃妻を亡くして飲んだくれる父に代わり、一家の柱として、貴族の師弟へピアノを教え始める。その中に、ブロイニング家があった。ブロイニング未亡人は、まだ16,7才だった彼を我が子のようにかわいがり、ベートーヴェンはこの家で文学、ラテン語や多くの名士たちと出会っていく。生徒であったブロイニング家の娘のエレオノーレは初恋の相手で、その交友は半生にも及ぶ。

 この曲のテーマはヴァルトシュタイン伯爵の主題による。ウィーンの名門で、ピアノ、作曲を自らする伯は、ベートーヴェンの才能を賞賛、シュタイン製のピアノを贈る。のちにピアノ・ソナタ作品53「ヴァルトシュタイン」が伯に献呈されている。
 
 素朴に暖かい愛の中に明暗のあるテーマはウィットに富んだ変奏へと導かれ、人間味のあふれた佳品となっている。ベートーヴェン後期のピアノ・ソナタ「告別」などに共通するものがすでに感じられる。(Y.C)
Henle


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