Saint=Saens
(1835-1921)


ベートーヴェンの主題による変奏曲 作品35 (1874)
 ベートーヴェンのピアノ・ソナタNo.18 Op.31-3 Es-dur(1802)第3楽章のTrio部分がテーマ。

 ベートーヴェンは1802年5月からウィーン郊外のハイリゲンシュタットに引きこもる。1798年頃から兆しを見せた難聴の苦悩から「ハイリゲンシュタットの遺書」をしたためる。このとき、頭をよぎる自殺を、芸術が引き戻した。演奏家ではなく、作曲家としての新しい生が、彼の人生の危機を克服し、交響曲No.2、3つのヴァイオリン・ソナタ(Op.30)、3つのピアノ・ソナタ(Op.31)、そして、多くのスケッチが生まれる。

 この変奏曲は序奏と8つの変奏、フーガ、コーダから成る。拍節、小節ごとに2台のピアノが入れ替わり、フレーズを織り上げる。その色彩感、明晰さは、フランス的なニュアンスを伝え、フーガに見られるような古典的な様式美と入り交じる。ベートーヴェンへのオマージュのように感じられる。 (Y.C)


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