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そして役者が揃った





















「うわぁっ!!」
崩れ落ちてくる本に押しつぶされそうになり、悲鳴を上げた日曜日。
よく晴れたある日の出来事。





工藤邸で新一は独り、部屋の掃除をしていた。
「ったくよー。なんでここはこんなに本で溢れてるんだ?!」
ほとんどが自分の私物なのに、文句を言う。
見渡す限り、本の山。
よくここまで集めたものだ。












ピンポーン。
玄関のチャイムの音がする。
出ていきたいが、足元を本が邪魔して動けない。
「面倒くせー」
ピンポーン。
チャイムは容赦なく鳴る。

「・・・・・分かったよ!!」
仕方なく、本を掻き分けドアを開けに行く。
これで新聞の勧誘か何かだったら、殴ってやる。



「こんにちは」
門の前に立っていたのは、意外にも哀だった。
「ん?どうした?」
「今日大掃除をやるって聞いて手伝いに来てあげたの」
よく見ると、彼女の手にはバケツと雑巾があった。
「おっ!サンキュー」
快く彼女を招き入れる。










「・・・・・何?コレ」
新一がさっきまで居た部屋を見て哀が絶句した。
「掃除をしてたんじゃなかったのかしら?」
言うことがイチイチ可愛くない。

「仕方ねーだろ?この本の量なんだから」
そう言って床を指さす。
全部本棚から出さないと、本棚を掃除できないのだ。
「へぇ〜」
と哀はおもむろに本をあさり始めた。
「ってオイっ!!掃除の手伝いに来たんじゃなかったのかよ?」
これじゃぁ手伝いの意味がない。





ピンポーン。
またチャイムの音がする。
「誰か来たわよ?」
場所を移し、今度はリビングの掃除をしてるときだった。
相変わらず本から目を離さず、哀が言う。

分かっているなら出て欲しい。
お願いだから掃除をして欲しい。

そう言いたいけど言えない性である。
「ハーイ」
良い子のお返事をして、客人を迎えに行く。



「よっ!!」
服部平次である。
しかもやたらでかい荷物付き。
「んぁ?何でオメーがいんだよ?」
彼は大阪在住である。
この荷物を見ると、どっか近くに旅行にでも来てここに寄ったのだろうか。

「上がらしてもらうで〜」
そう言って、勝手にズカズカ入ってくる。
「あ・・・ちょっと・・・・!!」
慌てて追いかける。
「おー!哀ちゃんじゃないかぁ〜」
哀を見つけ、どこぞのおっちゃんみたいな口調になる。
「あら、服部君」
奇妙な客人の登場に、さすがに本から目を離した。
服部はやたらでかい荷物をリビングの隣の部屋に置きに行き、
帰ってきたらと思ったら、新一に振り返ってこんなことを言い出した。
「あ、工藤!今日からお世話になるわ」





「はっ?!」
何だって?!



あっけらかんと言う平次に驚く。
「しばらく東京で仕事探そう思って」
高校を卒業して私立の探偵になった彼は、
何の悪ぶれもなくそう言った。

「だったら自分でアパートでも借りればいいだろ?」
わざわざここに来る必要はない。
「そんなこと言うなよ〜オレ達親友やないか」
親友になどなった覚えはない。
「それにこんな広い家で独り暮らしなんて贅沢すぎるっちゅうねん」
どんな理屈だ?!



「いいんじゃない?男ニ人で暮らすのも」
人事のように冷たく言う哀を横目に、
「何でヤロー同士で暮らさなきゃなんねーんだよ?」
「ま、固てーこと言うな」
「そうそう・・・あまり怒鳴っていると血圧上がるわよ?」

正反対なこのニ人にこんな事言われては何も言えない。





ピンポーン。
それにしても今日はやたら客人が多い。
ドアを開けたが、誰もいない。
もちろん門の前にも誰もいない。

「ピンポンダッシュ・・・・?」
今時こんなことするヤツいるのだろうか。
と思いつつ、ドアを閉める。



ピンポーン。
しかしまたチャイムが鳴る。
「・・・・何だよ?」
仕方なくまたすぐにドアを開けるが、
人独りいやしない。
「っ・・・・・!!」

キレる。
このままドアをずっと開けっ放しにしてやろうか?
しかしチャイムは鳴り続ける。



「っ・・・・・!!」
今度は門のところまで見に行く。
するとそこには一羽の白いハトの姿。
どうやら連続チャイムの実行犯はコイツのようだ。





「ハト・・・・?」
どうしてもイヤなヤツを連想させてしまう。










『大事なモノはもう貴方の手の届くところに・・・? 怪盗キッド』
ハトの首にこんな内容が書かれた紙が巻き付かれていた。
「手の届くところ・・・・?」
いつもにまして変な文章である。

(キッドのヤツ、実は現国の成績1なんじゃねーのか?)
そう思われてもおかしくない。

しかも大事なモノ?
このハトのことか?
それともこれは新しい予告状?
考えても分からないので、
仕方なくこのハトを連れて、家に引き返す。





「なぁ、ハトがいた・・・・って何で?!」
リビングのドアを開けて状況をニ人に話そうとした瞬間、
信じられない光景が見えた。
それもそのはず。
新一は唯一の出入り口の玄関にずっと居た。

しかしコイツがリビングでのんきにお茶を飲んでいるのは何故だ?!



「新一、久しぶり〜!!」
黒羽快斗は嬉しそうに新一に抱きつく。
「何でテメーもここにいるんだ?!そしてどうやって入った?!キッドが言ってた大事なモノとはおまえのことか?!」
すぐさま快斗を突き放し、パニック状態になった頭を整理するため訊ねる。

「ヤダな〜!そんなに怒鳴るなよ」
茶目っ気たっぷりでヤローにそんなこと言われても嬉しくない。
ましてや抱きつかれたくなんかない。



「・・・・・・・カルシウムが足りないんじゃないの?」
哀はそう言いながら、牛乳を注いでくれる。
本当に彼女の言うこと・やることは可愛くない。
しかも余計なお世話だ。



「哀ちゃんの言うとおりやないか、工藤ちゃんと飲めよ?」
平次は可笑しそうに笑いながらグラスを渡してくる。
そんな平次を無視して、牛乳を飲み干す。
冷たくてウマい。





じゃなくて、また怒鳴りつける。
「人の質問に答えろ!!!!」
「逢いに来たんだよ。窓から侵入した。キッドのことは知らん」
あっけらかんと順番に質問に答えた快斗に絶句する。
何で今日はこんなにも疲れるのか。
ただ単に掃除をしたいだけなのに。





「平次の話聞いたら、偶然同じ状況で」
「・・・・・で?」
自分でも眉が上がるのがよくわかる。
すごくイヤな予感がする。

「・・・・今日からオレもお世話になるわ」
にかっと笑われても、返答に困る。



冗談じゃない。
「あ、もう荷物はニ階の空いている部屋に置いといたから」

そんな心配などしていない。





「・・・・・この三人じゃ生活力ないわね」
欠伸をしながら哀が人事のように言う。

傷心の自分に追い打ちをかけないで欲しい。



「あたしもここで暮らそっかな・・・」
ボソリと哀がつぶやく。





何ですと?!

そんな思いつきで言わないで欲しい。
「うん、決めた!あたしも今日からここで暮らすわ♪」
「語尾に♪を飛ばされても・・・・」
「だってこのメンツで料理作れるのあたしぐらいでしょ?」
鼻でフフンと笑って彼女は言う。

「餓死してもいいの?」
さらに追い打ち。。
それを言われちゃどうしようもない。
確かにオレらは料理など出来やしないのだ。
三日で餓死するのは目に見えている。



「じゃぁ、決まりね?荷物取ってくるから待ってて」
何も言い返せないオレ達を無視し、彼女はさっさと引き上げていった。
博士はどうするんだい?!というツッコミは置いといて、








マ、マジ・・・・?
























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