「工藤先生、プリント集めてきました」
学校では優等生。
教師と生徒の関係を、仮面を被ってやりこなす。
「あぁ・・・・・・ありがとう」
大好きな低音の声を聞いても、その喉元に唇を這わすことは出来ない。
だから代わりに、偶然を装ってそっと腕に触れる。
ねぇ、先生。
今日もあたしを愛してくれている?
「新っ・・・・・・・工藤先生」
春の花のように、柔らかく甘い声が響く。
この人が彼を「新一」って呼ぶのを、いちいち気になんかしてられない。
間違えて呼ぶのはわざとじゃない。
解っている。
こういう人なんだって、頭では解ってる。
だけどそれが本気で憎たらしいのも事実。
彼の愛を一身に受けていながら、それに気づかない彼女が憎くて堪らない。
結婚をしても旧姓のまま、彼と同じ職場で仕事を続けている彼女が。
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