サクラサク

「ねぇ、キレイだよ！灰原さん」
歩美のはしゃいだ声が響いてる。
「うわぁ・・・本当に綺麗ですね」
「桜もち食いてーな」
「ったく・・・元太はそんなことばっか言ってるから太るんだよ」
「あら、小学校のときはそれぐらいでもいいんじゃない？」
春の柔らかな風を受けながら、気の合う仲間達とあたしは笑った。






あたし達は今日はお花見に来ている。
まだ七分咲きって感じだろうか。
でもそれぐらいがちょうどいい。
ほんのりピンクに染まった桜は、誇らしげに咲いていた。
ここではなぜか優しい気持ちになれた。













桜を見上げていると、彼が話しかけてきた。
「綺麗だな、桜」
「ええ・・・・」
「知ってるか？桜の花言葉・・・」
「桜にも花言葉があるの？」
花言葉には詳しくないので、驚いて瞬く。
「優れた美人」
彼は桜から視線を外さぬまま答えた。
「優れた・・・・美人？」
「そ。おまえのことみたいだな」

あたしの心は穏やかだった。













一番大きな桜の木の前に立って、あたしは言った。
「ねぇ、生まれ変わったら何になりたい？」
「えっ・・・・」
「いいから教えて」
「世界一の名探偵・・・かな？」
「工藤君らしいわね」



「そういうおまえはどうなんだよ？」
「あたしは空になりたい」
「空・・・？」
「色を変えても空はつながってるから」
「色を変える？」
「あたしはずっと暗い狭い世界にいたでしょ？憧れてたの。あなたのいる光の世界に」
「よく分かんねーな」
「こんなあたしでも、光の世界に行けなくても、空としてだったら・・・・・」
ここで一呼吸おく。
息を大きく吸って続けた。
「貴方の傍にいられそうだから」
「灰・・・・原？」





「貴方に逢うまでは、心を揺らされるまではそんなこと考えもしなかった」
毎日を生きるのに、精一杯だったから。
「オレのいるこの世界にも、もうおまえはいるじゃん」
「えっ・・・・？」
「おまえの居場所ならここにあるじゃねーか」
「どういうこと・・・・？」

「空になりたいなんていうなよ。ずっとココにいろよ・・・・」



突然、あたしの中に今まで感じたことがないような風が吹いた。
それはみるみるあたしを癒してくれた。
「・・・・・・うん」










つま先を蹴って、あたしは彼に抱きついた。

今、ココにいる貴方。
あたしの居場所。


















「やっぱあのニ人ってデキてたんじゃんかよぉ」
「えー？！そうだったの・・？」
「アダルティーな関係ですか？！」
「コラコラ・・・君達」
「博士は黙ってて！！コナン君・・・」
「オレらがいるじゃんか、歩美」
「元太君、コナン君みたいにぬけがけはいけませんよ」




























でもね、知ってた？

あたし今は桜になりたい。
あなたが綺麗だと言った、あの桜に。