プロジェクトX−6
〜クリスマス当日〜











「さぁ、楽しいショーの始まりだ・・・」

純白のマントを翻し、

彼はやってきた。

眠るこの街に

奇跡を起こすために・・・





「来たな!怪盗キッド!!」

「今日こそ捕まえてみせますよ!!」

中森警部と白馬の声が続く。

「ヤ・・・ヤダなぁ・・・」

「ちょっと何言ってんの?高木君!!」

高木刑事と佐藤刑事の声も聞こえる。

「ついに来たか・・・怪盗キッド」

「あれが悪名高い怪盗キッド・・・」

駅の向こう、ちょうど中森警部達がいる反対方向に

コナンと哀は立っていた。

(フフ・・・何言ってるの?怪盗キッドを捕まえるのはこの私よ?)

傍には紅子も来ていた。

(もう既にキッドは私の意のままに操られているのよ・・・?)

目を細め、口元を歪める。





「やぁ、皆さんお揃いで」

ハンググライダーに乗り、颯爽と空中飛行を楽しんでいるキッドは

純白のマントの下に、何故かサンタクロースの衣装を隠していた。

「「サ・・・サンタクロース???」」

「さぁ、楽しいショーの始まりだ・・・」






















「どこのどなたか存じませんが、本日はお招きありがとうございます。

怪盗キッドのスペシャルマジックショーの始まりですよ」

それを言うと同時に、

彼はマントを脱ぎ捨て空中から姿を消した。

「なっ・・・バカな?!」

「消えた?!」

「そんなハズはない、ヤツは赤い服を着ているのだぞ?」

「確かに・・・目立つはずですよね?」

「ハハハ・・僕ならすぐに見つけられますよ・・・」

「な・・・一体何が起こったの?あの赤魔術のせい???」

実は紅子は快斗に新種の赤魔術をかけておいたのだが、

どうやら効果はなかったらしい。

そもそも一体どんな赤魔術なのだろうか・・・?

中森警部達が騒いでいる中、

コナンは独り首をかしげていた。

「なぁ・・・お招きってどういう意味だ?」

隣の哀に尋ねる。

「どういうこともなにも・・・招かれたのよ」

「・・・じゃぁ、予告状を出したのは怪盗キッドじゃないのか?」

「そうかもしれないわね・・・」

「誰が出したんだ?」

「知らないわよ、そんなの」

相変わらず淡々と言う彼女相手に、

しゃべる気力が失せてしまった。

「・・・それより工藤君、ちょっと出かけてくるわ」

「はっ?!どこにだよ?」

「サンタクロースに逢いに行くのよ」

「???」





















「今宵は月がキレイですね、お嬢さん」

駅の方に向かう途中、

ふいに後ろから声をかけられた。

「あら・・・貴方のマジック程じゃないわよ?」

哀は後ろを振り向かずにそう答えた。

「メリークリスマス!!お久しぶりですね」

「メリークリスマス・・・一年ぶりぐらいかしら?」

「またお逢いしましたね?」

「えぇ・・・きっとまた逢えると思ってた・・・」

後ろから足音が近づいてくる。

「志保ちゃんはこんなところで何をしているのかい?」

「あら・・・貴方に逢いに来たのだけど?」

そこで初めて後ろを振り返った。

目の前にはサンタクロース。

「なるほど。強く儚いもの同士惹かれあったわけだ?」

「・・・そうみたい」

「今日はメガネの坊主はいないのかい?」

「向こうにいるわ・・・彼も貴方を待っている」

「くー!なんでこんなに敵が多いんだ?」

「貴方が怪盗キッドを廃業しない限り、永遠に続くわよ?」

「・・・それは出来ない相談ですね」

理由は分かっている。

「・・・まだ見つからないのね」





「さてと、そろそろ仕事をしたいんだけど・・・?」

「仕事?今日はお呼ばれじゃなかったのかしら?」

くすりと笑い、夜空を見上げる。

星が綺麗だ。

「いや・・・淋しい依頼人を笑顔に変える、とっておきの仕事をしに来たのですよ」

「あら・・・それってあたしのことかしら?」

「貴女がその依頼人なら・・・ね?」

「楽しみにしているわ」





















「どこ行ってたんだよ?」

「別に」

コナンの元に帰ってきた哀は、何故だか嬉しそうだった。

「怪盗キッドが姿を消してから十分か・・・」

「もうすぐ出てくる頃よ」

「?」










「・・・イッツ・ショータイム!!」

その瞬間、

弾けるような音と共に

駅前のツリーが光り輝きだした。

「「えっ・・・?!」」

そこにいる全員が驚き呆れる程、

ツリーには無数の光のイルミネーションがされていた。

「キ・・・キレイ」

「すっげぇ・・・」

「奇跡だ・・・!!」

あちこちからため息がこぼれる。

「さすが怪盗キッド・・・」

キッドを虜にする予定だった紅子は、

反対にキッドのマジックの虜になってしまっていた。

「なるほど・・・キッドが言っていたツリーを盗むというのはこのことだったんですね!!」

白馬が独り感心していると、

「バカヤロー!!何感心してるんだ!!」

そう言いながらも、中森警部は嬉しそうだ。

「キレイね、高木君」

「ハ、ハイ!佐藤さん」

どうやら、お仕事だけど素敵なクリスマスになったみたい・・・?












「あっ・・・雪だ」

窓から空を見ていた青子は、

思わず身を乗り出した。

向こうの方にキレイに装飾されたツリーが見える。

真っ白な雪のせいで、

イルミネーションはますます輝きを増す。

「最高のクリスマスね」

青子がぼやいていると、

「メリークリスマス!!青子」

真打ち登場。

「・・・快斗っ!!」








「綺麗・・・」

二人はただ呆然とツリーを眺めていた。

「キッドにしてやられたな」

コナンが苦笑いをしながら空を仰いでいる。

「メリークリスマス・・・怪盗キッド」

「メリークリスマス・・・おちゃめなサンタさん」













Merry Christmas...


Fin.





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