みんなの夏休み日記4

〜黒羽快斗の場合〜











夏は暑い。
特に今年は異常なほど暑いと思う。
今更ながら地球温暖化が深刻な問題に思えてきた。



こんな暑い夏だからこそ、アイスを食べようじゃないかっ!!
いや、アイスだけに限らない。
夏バテしないためにも、いっぱいスタミナのある食べ物を食べようじゃないかっ!!
そんなわけで食い倒れの街・大阪へ『食い倒れ七日間の旅』に行くことにした。










が、

「食中毒?!」
大阪食い倒れツアーに参加したはいいもの、
何と客の大半が食中毒で倒れてしまったのだ。
どうも昼に食ったもんに当たったらしいが、
「何でオレ、平気なんだろう・・・?」
――――――あんまり深く考えちゃダメです。





そんなわけでツアーはニ日目だというのに中止になってしまった。
「そんな〜」
折角大阪まで来たのに仕方ない。
強制で東京まで帰された。
「なっ・・・!まだテッチリ食ってないぞ?!」
――――――夏なのに食べるんですかっ?!































「っていうわけだったんだよ」
後日、不満タラタラで新一に愚痴る。
「おまえも大変だったんだな・・・ってオレが愚痴りたかったんだけど?」
食い倒れツアーからとぼとぼ帰ってきた快斗を、
例の夢の件で呼び出した新一は不満そうに言う。
「聞いたよ、夢の中で犯人分かっちゃったんだろ?」
「・・・・・・・夏休みはやっぱり外に出かけるべきだよ」
「はっ?!」
突然言い出した新一に、快斗は「何だそれ」とでも言いたそうに小首を傾げた。
新一は好きな読書を控え、遊ぶ宣言をしたのだ。
「バイトでもしようかな?」
「あっ、それいい!!でもおまえは探偵業が忙しいんじゃないの?」
「・・・・・・」
顔を歪めた新一に苦笑する。
「大変だな、たんてーさんは」
新一の頭を軽く叩き、店をあとにする。



「バイトかぁ・・・・・・・」















「いらっしゃいませー」
お得意の愛想笑いで客を迎える。
楽しみにしていた食い倒れツアーが中止になってしまい、
やることがなくなった快斗は新一が言ってたようにバイトすることになったのだ。
夏休みだけの短期で、時給は九百円。
なかなかよい。
しかもアイス屋である。
特権で、働いた日にはアイスが一個タダで食べられるのだ。
「まるでパラダイス」
きっとこのバイトはオレのためにあるのだろう。
そんな気までしてきた。
一人悦に入っていると、
「黒羽君っ!!」
少し甲高い声が響く。
「ん?」
おまけにここのバイトは可愛い女の子が多い。
今声をかけてきた女の子も現役女子高生で、何とも嬉しい限りだ。
「ちょっとお手洗いに行って来るから一人で店番お願いね」
「OK!」
今日は涼しいからか、そんなに客は来ない。
ごめんねと謝る彼女に笑って答える。





「お兄ちゃん、アイスちょうだい?」
と、そこへ白いワンピースを揺らして四歳ぐらいの女の子がやってきた。
「ん?何がいい?」
お馴染みのバニラからマンゴーなどといったものまで、
種類は様々である。
だから余計悩むのだろう、女の子は「う〜ん」と小首を傾げる。
「今日はチェリーがオススメだよ」
そう言って、ピンクのさくらんぼの生地に生のアメリカンチェリーが潰されて入ってるアイスを指さす。
「これ・・・美味しいの?」
「そりゃぁもう!ほっぺたが落ちちゃうよ?」
そう笑って言って、ほっぺを落とすまねをする。
「ホントに?!」
さくらんぼに負けないくらい頬をピンクに染めて、
少女も嬉しそうに笑った。
「じゃぁ、それちょうだい?」
「二百円ねー」
コーンにたっぷりと盛ってやり、ブルーの紙を巻いて渡す。
「ありがと、お兄ちゃん」
「まいどー」
小銭を丁度ピッタリ受け取り、
そのまま少女の小さな手に軽くキスをする。
「またね」
さっきよりさらに紅くなった彼女に、ひらひらと手を振る。





「黒羽君ってストライクゾーン広いね」
「えっ?!」
いつからそこに居たのだろうか、いつのまにかバイトの女の子が戻ってきた。
「ああいう子が好みなんだ?・・・・・もしかしてロリコン?」
「違いマス」
名誉のために弁解しておく。
「これもサービスサービス」
「随分サービスいいんじゃない?」
「でも黒羽君が来てから女性のお客さんが増えてねぇ」
初老の店長がひょっこり顔を出し、嬉しそうに笑う。
顔はしわだらけなのに、笑うとさらにしわが増える。
でもなかなか茶目っ気のあるおばあちゃんで快斗は大好きだった。
「今日はもう上がりじゃろ?黒羽君」
「あ、そうですね。ではお先に――――――」
と控え室に戻ろうとして振り返る。
「今日も一日ご苦労様です、お嬢様方」
そう言っておばあちゃんのしわだらけの痩せた手にキスをし、
女子高生には一輪のバラを差し出す。
「や、やだ・・・・・黒羽君・・・・・・今日も私の分までアイス食べていいわよ」
「年寄りをからかうもんじゃないよ・・・・・・いいさ、今日も好きなだけもらって」
それぞれ紅く頬を染めて、テレ隠しのためにかアイスを話に出す。
「毎度どーも」
快斗はニヤリと口元を歪め、アイスの方に目を落とす。
「今日は何にしようかな〜?」



やっぱりこいつはタチが悪い。
スロライクゾーンが広過ぎである。
こんな調子でいつもアイスを余計に多くもらうのだ。





「んー!うまいっ!!オレって幸せ者だな〜」
右手にダブル、左手にトリプルを持ち、帰り道はいつも食べ歩き。
このあと、哀から軽井沢のお土産として特製アイスを更にもらうことになる。
しかも一週間後、スイカ割り大会も行われた。
明らかに冷たいものを食べ過ぎているが、彼の胃は随分丈夫に出来てるものだ。











「オレの胃袋はブラックホールだっ!!」











―――――――――――――そういう問題じゃないです。





















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