四周年&弐拾萬打特別企画



続・HR
〜振り返れば先生がいる〜











CAST


      





灰原哀


工藤新一


黒羽快斗


吉田歩美


中森青子


小泉紅子


帝丹高校在校生の皆さん




*友情出演*

毛利蘭














present by

『未完成症候群』
−Lime Uduki−
2007.01.21





続・HR
〜振り返れば先生がいる〜







『合格』とだけ書かれた味気ない書類を持って、外に出た。
頬を撫でる暖かい風は、春の訪れを告げていた。

歩いている途中で携帯電話が鳴り、「どうだった?」と嬉しそうな声が聞こえる。
「その様子だと、黒羽君も受かったみたいね」
「紅子も受かったってさ。先生たち、喜ぶぞー」
今日は国立大の合格発表の日。同じ大学を受けた三人は、揃って無事合格を決めた。

「あのね、黒羽君…」
「先生に泣かされたら、いつでもおいでよ。何たって同じ大学だからさ」
あたしの声は途中で遮られ、一方的に電話は切られた。
春からの生活を思うと、ちょっと憂鬱になった。

桜がぼちぼち咲き始めた最後の坂道を登って、母校を訪れる。
学校は数週間前見た景色のまま、新しい生徒を迎え入れようとしている。
次の時代にはどんな出来事が起こるのか。それは去っていく自分には解らない。
それでもいつの時代にも変わらぬ思いを、この場所はきっと与えてくれる。



職員室を覗いても、先生の姿はなかった。
卒業式のことがあるのでここには居辛く、そそくさと退出した。
行く先は解っている。

春休み中ということもあり、図書室には鍵が掛かっていた。
予想が外れて落胆する。絶対ここだと思ったのに。
居心地の良くない職員室に戻って、待つべきだろうか。

コツコツコツコツ…
リズミカルな革靴の音が、遠くから聞こえてくる。
何度も聞いたことがあるこの音が懐かしくて心地が良くて、思わず目を閉じて聞いていた。
すぐ後ろでチャリンと鍵の束が鳴る音がした。その音に目を開ける。

名前を呼んだら振り向いてくれる人。
温かいぬくもりと、優しい眼差しをくれる人。
大きな掌で、全てを包み込んで浄化してしまう人。



振り返れば、先生がいる。



























ってことで舞台裏。

えー、大変遅くなりましたが四周年&弐拾萬打企画です。
『HR〜工藤先生の憂鬱〜』の続編で完結編なわけですが、何と前作から4年近くも経ってしまいました…な、何故だ。
続編を書く書くと言い続けて、4年も経ってしまっていたんですか!我ながらびっくりです。
待っていた方はいらっしゃらないと思いますが、ここに無事完結できて良かったなぁと他人事のように思っています。

前作はメインの二人ばかりで女の子が全然書けなかったので、今回は各章毎にそれぞれ一人称を変えて書くことが出来て良かったです。(その割には誰も報われていない)
唯一の心残りは「教師と生徒」の関係を、学校行事の中で描けなかったこと。文化祭とかも書きたかったんだけど。
行事モノは「学校へ行こう!!」で散々書いてしまったので、要はネタがないのです。

前作の各章のサブタイトルは好きな小説から取ったりしていましたが、今回は好きな少女漫画から取っています。
有名なものが多いので、すぐに気づかれたと思いますが。
ただメインタイトルの「振り返れば先生(ヤツ)がいる」だけは小説なのですが。

最後になりましたが、四周年&弐拾萬打ありがとうございました。
何かもうすぐ五周年とか迫ってきているのですが…どうなることやら。