君にささげる花束(番外編)
「ふっきれたみたいね」
時間ギリギリになって慌ててやってきたオレ。
その顔色を見て、灰原は微笑した。
「あのまま出ていったきり、戻ってこないかと思った」
何とも言えない灰原の顔。
景気のいいラッパの音がし、
愉快なマーチが流れ、披露宴が始まった。
たくさんの拍手の中、新郎新婦が入場してきた。
ニ人は幸せそうだ。
その姿を見たら、もう心の中のモヤモヤは全くって言っていいほど無くなった。
「バーロ、せっかく招待されたのに出席しないわけないだろ?」
フっと笑い、意地悪っぽく言ってやった。
「そうね・・・」
彼女も笑った。
「悪かったな」
「えっ・・・?」
「いろいろ八つ当たりして・・・・」
少しバツの悪い顔。
でも悪かったのはオレ。
「うぅん、貴方があたしを責めてもおかしくないもの」
また泣きそうな顔になる。
蘭の方をまっすぐ見つめ、呟いた。
「綺麗ね、蘭さん」
それっきり彼女は黙ってしまった。
披露宴も終盤にさしかかり、皆泣いている。
おっちゃんはもう立ってられる状態じゃないし、
園子も号泣。
「蘭、幸せになってね」
なんて言ってやがる。
蘭の目にも涙が。
先生になだめられている。
そんなニ人は見てて微笑ましかった。
そしていよいよ最後のブーケ投げ。
歩美と園子がやたらはりきっている。
「おまえは欲しくねーの?」
一人ぽつんと淋しそうにしている灰原に声をかけた。
「あたしはいいわ。別に結婚願望ないし」
「へぇー」
と、そのとき蘭が思いっきりブーケを投げた。
それはまっすぐ灰原の方に―――
と思ったら急に姿を消した。
「えっ?!」
一番驚いたのは、灰原である。
自分のところに来るはずだったブーケが突然消えたのだから。
「フッフッフ・・・・」
園子の高笑いが聞こえた。
どうやら根性で取ったみたいだ。
「園子ねーさん、ずる〜い!!」
「うるさいわね!私はもう二十五なの!!後がないのよ!!!」
向こうでごちゃごちゃやってるを無視し、灰原の方を向いた。
やはり少し残念がっいる。
「惜しかったな、取れると思ったろ?」
からかってみた。
「べ、別に・・・!!」
「ホントは欲しかったんじゃねーの?」
「だからいらないって・・・・・えっ?!」
灰原の言葉を聞き終える前に、
オレはテーブルの下に隠していた花束を取りだし、彼女に渡した。
「これ・・・・?」
さっきの蘭以上に驚いた彼女の瞳。
「・・・・おまえに似合うと思って」
どうやら自分は照れてるらしい。
「・・・・・」
リアクションがない。
彼女はただボーゼンとしてた。
「あんまいいもんじゃねーぞ?」
「うぅん、嬉しい・・・・」
「蘭のために買った花束に、店員がおまけでくれたようなやつだぞ?」
「うぅん、とっても綺麗・・・・」
何だか頬が熱くなってきた。
「ありがと」
彼女の笑顔を見て、嬉しくなった。
今日というこの日に、彼女が居てくれて良かった。