「コナン君、ハンカチ持った?」
「・・・・・・・持ったよ」
ったく。いつまで経っても子ども扱いの彼女に苦笑して、
「いってきます」
あれから一ヶ月。
今日は帝丹高校の入学式。
数年前通ったあの懐かしい制服に身を包み、探偵事務所の階段を駆け下りていく。
階段を降りたところ、喫茶店ポアロの前に人が立っている。
ポアロの客かと思ったが、見覚えのある姿に気づき驚愕する。
「・・・・・・・灰原・・・・その制服っ・・・・・」
そこに居たのは、帝丹高校の制服を纏った哀。
紫色のプリーツスカートが、柔らかい風に揺れている。
頬を薔薇色に染めた彼女は、光を受けて輝く赤髪を少しだけ短くしていた。
「難関私立女子高は?」
慌てふためいて、思わず声が上擦りながらも彼女に訊ねる。
「受かったけど、行くとは言ってないわ」
その薔薇色の頬をぷいと横に反らして、わざとらく口を尖らす。
「・・・・・・・って何だよそれ!!」
いつの間に帝丹高校の入試受けていたんだよ。
「気づかなかった?あたし、あの時笑っていたのよ?」
あの時というのは、お守りを返してくれた時のことだろう。
俯いて彼女の表情は分からなかったが、独りだけ全てを分かっていてこっそり笑っていたのだろう。
目の前の彼女は腹を抱えて、笑っている。
でもそんな可愛らしくない君が、とても君らしくて。
笑って差し出した手を、それでもぎゅっと握り返してくれた君が愛しくて。
哀がこちらを見て、ふんわりと笑った。出逢った頃には、見られなかったような笑顔だ。
「ありがとう・・・・・嬉しかった」
欲しかった、たったひとつの言葉をくれて
ありがとう。
これから先、何が起こるかは解らない。それはまた別のお話。
それでも僕らはこうやって、ずっと手を繋いで笑い合えたらいい。
隣で君が笑って見守っていてくれたなら、
きっとどんなことだって乗り越えてみせる。
いつだって、始まりは此処からだった。
さぁ
今日も、君と
学校へ行こう。
完
これにて本編は終了です。
タイトルを「学校へ行こう!!」とした時から、最後の台詞はこれでいこうと決めていました。
思えば、前のサイトから連載を始めて三年という年月が過ぎました。
時間もかかりましたし、いろいろなことがありました。えぇ、本当に。
今ここに終わりをきちんと迎えることが出来たのは、まず第一に「学校へ行こう!!」を愛して下さった皆様のおかげです。
私は私の書ける様にしか書けないので、ご期待に添えなかったり、がっかりさせてしまったことも多かったと思います。
申し訳ありませんでした。それでもごめんなさい、ありがとうございます。
こんなにも長いシリーズを書けて、この「学校へ行こう!!」というひとつの作品を書けて、本当に本当に幸せです。
書きたいことがあって、書きたくて書いています。
一人でもいいから、この作品を読んで少し楽しい思いをすることが、
いろいろなことがある毎日の中で、せめて一欠けらの糧となるような。
そんなことが出来ていたら、作者冥利に尽きます。
貴方の貴重な時間にお付き合い頂けて、嬉しかったです。
全ての「学校へ行こう!!」ファンの皆様に、愛と感謝を込めて。