for the love of Heaven
十二月二十四日 皮肉にも今日は日曜日だった。
哀は博士の家で少年探偵団とクリスマスパーティーを開いていた。
もちろんコナンもいる。
(蘭さんと一緒にいてあげなくていいのかしら・・・?)
そう思いながらもちょっと嬉しかった。
今年のクリスマスはいつも淋しく過ごしてきた過去とは違う。
組織にいたときはクリスマスでもパソコンの前にいた。
やりたくもないことばっかしていて、
『あたし』なんかなかったんだ・・・・
パーティーも後半に突入し、プレゼント交換が始まった。
「赤鼻のトナカイ」の曲に合わせて次々プレゼントが回ってくる。
哀が中にいれたのは生まれて初めて編んだ手袋だった。
(ま、円谷君あたりに当たるのがオチよね。小嶋君に当たると小さすぎて壊れそうだわ)
相変わらず考え方は冷めていた。
(そういえば江戸川君は何をいれたのかしら・・・・・?)
不意に曲が止まった。
哀の目の前にある袋は真っ赤なリボンがかけられていた。
(吉田さんのかしら・・・・?)
包装紙を破かないようにそっと開けてみると、一冊の本が入っていた。
「あ、それオレの」
コナンが言った。
「うそっ・・・!!」
おもわず声をあげてしまい、コナンの方を向くと
コナンは見覚えのある包装紙を持っていた。
「それ・・・あたしの・・・・・!!」
(まさか江戸川君にあたるなんて・・・・)
頬が赤くなっていくのが自分でもよく分かる。
「ん?手袋か?」
「ちょ、ちょっと!!」
もうゆでだこ状態である。
(もっと丁寧に編めばよかった・・・・)
今更遅いと分かっていても後悔した。
「オメーが編んだのか?」
(笑われる・・・・!!)
唇を噛んで下を向いた。
「結構上手いじゃん」
「えっ?!」
「オメー、こんなことも出来んだな」
手袋をはめてコナンがニカっと笑った。
「あんまり似合わないわね」
「悪かったな」
――またやってしまった。
どうしても彼の前じゃイヤな女の子になってしまう。
「まっ、暖かくていいや」
今度は哀がコナンがくれた本を開き始めた。
(また何かの推理小説かしら?)
ゆっくり包みを開けてみると、
『Happy Christmas』と書かれた可愛らしい絵本だった。
表紙にはいかにもフィンランドにいそうなサンタの絵が描かれていた。
(江戸川君には似合わないわね)
「これ・・・江戸川君が買ったの・・・?」
笑いを堪えながら聞いてみた。
「あ、いや。買ったというか、オレのモノなんだよ」
「江戸川君の私物・・・・?」
「そ。昔、母さんが買ってくれて今でも大切な宝物なんだ」
「そんな大切なもの貰えない・・・・」
「いいんだよ、灰原にやるつもりで選んだんだし」
一瞬、胸が張り裂けそうになった。
「二十世紀最後のイヴだしな」
「・・・・・・ありがと」
哀はまた下を向いて小さな声で言った。
涙を見せないように。
お願いだから、どうかこの‘永遠’をあたしに下さい―――
誰も奪わないで。