ベイカー街で逢いましょう











「ありがと、工藤君」




コクーンから無事脱出することが出来、少年達五十人の命は救われた。

一番最初に気がついたあたしは、

生き残った最後の少年にお礼を言った。

「おまえ・・・生きてたのか」

彼の目覚めていない曇ったような声。

「当たり前でしょ?あたしも含めてみんな、貴方もちゃんと生きてるわよ」

まだ半分夢の中にいるような気分らしい彼を起こす。





「あたし達、元の世界に戻ってきたのよ?貴方のおかげ――――」

「コナン君、助かりました〜」

あたしの声は途中で遮られた。

円谷君が起きて、声をかけてきたのだ。

「オメーすげーな」

重たい身体を起こしながら、小嶋君も言う。

「江戸川君、ありがとう」

「おまえ、やるな〜」

「助かったよ」

「・・・ありがとな」

と口々に諸星君達がお礼を言うのを聞いて、

あたしと彼は顔を見合わせて笑った。

「コナン君、ありがと」

最後に吉田さんのキスを照れて受け取り、彼はまたあたしの方を向く。





「おまえはくれないの?」

「・・・・バカ」

呆れたようにそっぽを向く。










「貴方を最後まで助けられなくてごめんなさい」

そっぽを向いたまま謝るあたしに、

「何言ってんだよ?オレを庇ってゲームオーバーになっちまったクセに」

とコクーンの淵に腰掛け、きまりの悪そうに彼は言った。

そのしぐさが可愛らしくて、思わず噴出してしまった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・もしかして気にしてた?あのねぇ、あたしは自分の意思で貴方を助けたのよ?」

あたしも同じように隣に腰掛ける。

「最後までオレと居たかったのに?」

「よくもまぁそんな自信があるわね」

「ヤレヤレ」と大きくため息を吐く。










「・・・・本当はもうダメかと思ったんだ」

「う・・・ん?」

「切り裂きジャックは捕まえられない。列車は止まらない。ワインで血まみれになるし。初めてだったよ、こんなの」

「・・・・うん」

自分が存在しない彼の冒険話をあたしは聞くことにした。

「オレがゲームオーバーになったらみんな死んじまうだろ?」

「プレッシャーだった?」

あたしはくすりと笑い、嫌味を言う。

「まぁな」

腕を背中に回し、伸びをする。

相当疲れたみたいだった。





「父さんと諸星・・・いや、ヒロキ君に助けられたよ」

「ヒロキ君・・・?」

あたしの名前がないことに、少し嫉妬しながら尋ねる。

「人工知能プログラム“ノアズ・アーク”を開発した天才少年だよ」

「“ノアズ・アーク”ってコクーンを占領した?」

「そう、そいつの幽霊が諸星の身体を借りてゲームに参加してたんだ。最後はヤツに助けられたけどな」

そう言って彼は無邪気に笑った。

「そうだったの・・・・」

何も知らなかったあたしは少し淋しくて、

思わず下を向く。

「でも一番効いたのはおまえの言葉かな?」

「えっ・・・・・?!」

突然のことで驚く。

あたし、何か言ったっけ・・・・?





「どうしようもなくなって諦めかけてたんだ。でもおまえも含めていろんなヤツに助けられたから・・・」

ここで彼は一呼吸置く。

「今度は俺が助ける番だと思った」

彼の瞳に自分が映る。





ああ、そうか。

あたしはあの時こう言ったんだ。

「・・・・・貴方があたし達のホームズなんだから」





コクーンから降りて、地に足をつける。

そのまま彼を見つめた。

「そう、それを聞いてたから絶対生きて還らなきゃと思えたんだ」

彼は生きていることを確かめるように、あたしを強く抱きしめた。



















「・・・・・信じていたわ」

「・・・・・・・・?」

「貴方ならきっとやってくれるって」

キスの代わりにとっておきの笑顔をあげる。





あたし達は今ここに居る。

日本はリセットなんかさせない。

だったまだ始まったばかりだもの。

生きるということに一生懸命になろう。

人は独りでは決して生きていけない。

隣に貴方が居てくれるなら、

きっと、もっと幸せね。





「いつか二人で本物のベーカー街に行こうな」

彼が手を差しのべる。

あたしはその手をとり、しっかり握り締める。

「うん」













































その後の様子が書きたくなり、こんなの書いてみました。
題名に意味はないです。ベイカー街出てないし。
映画はすっごくよかったです!!
今回の脚本は大好きな野沢さんということで、私すっごく楽しみにしてたんですよ。
結果は期待以上でした。今までとはまた違う感じでよかったです。
ちょっと不服なのは、予告で蘭ちゃんが谷底にまっさかさま・・・・ってあったじゃないですか?
あれ絶対コナンが助けると思ったのに。(コ哀ファンじゃないのかよ)
今までのパターン上、そう考えるのが自然じゃない?蘭ちゃんほったらかしだよ。(笑)
あと、最初の字幕早すぎ。(笑)読めないって。
でも父さんイカス!さすが新ちゃんのお父さん。
最初から犯人がわかってる事件というのは新鮮でした。「コロンボ」みたい。
亡霊・・・やっぱりヒロキ君のことだったのかな?
「頼むわよ・・・あなたはあたし達のホームズなんだから」←確かこんなセリフだったような。
絶体絶命コナン君にとって、哀ちゃんのこの言葉がやっぱ決め手だったでしょう!!
ゲームオーバーの時の哀ちゃんの表情にはくらっときました(いつも悩殺されてるけど)
今回は蘭ちゃん置いといて(笑)ちょっとコ哀っぽい気がしました。
哀ちゃんと言えば、野沢さんも哀ちゃんお好きだそうで。
プログラムのインタビューで「哀ちゃんと新一と蘭ちゃんの三角関係の話を書きたい」だって!

見てーーー!!(狂)

でも哀しい話なら嫌だなぁ。哀ちゃんが二人のために利用されるのとかね。



野沢さんのご冥福をお祈り致します。