38℃





今日はなんだか朝から身体がだるい。
(風邪でも引いたかしら・・・?)
あいにく、博士は昨日から大学時代の友人の家に行っている。
家にはあたししかいない。





(前にもこんなことあったっけ・・・・?)
それは確か、十年以上前のあたしがまだ四歳のとき。
両親は研究に夢中で、あたしたち姉妹はいつもほっとかれてた。
その日あたしは熱を出して、でも両親は看病もしてくれなくて。
お姉ちゃんだけがずっとそばにいて、看病してくれた。
でもそんな優しいお姉ちゃんももういない・・・・





泣きそうな目をこすり、ベッドから降りた。
(風邪薬が確かリビングの引き出しに・・・・)
部屋のドアのノブに手を掛けた瞬間、めまいがした。
(ヤバ・・・・立ってられない・・・)
そのとき玄関のチャイムが鳴り、一人の少年が。
「よぉ!灰原!!ちょっと頼みごとがあんだけど・・・」
「工藤君?!」
まぎれもなくその少年は、コナンだった。
(ヤダ・・・こんな格好・・・・)
慌ててカーディガンでミッフィーのパジャマを覆った。
足音がだんだん部屋に近づいてくる。
(あっ・・・意識が・・・)
コナンが部屋に入った時には、もう哀は床に倒れていた。
「灰原?!」





寝ている間に夢を見た。
まだ幸せだったあの頃・・・・
もう戻れない。





「ぅん・・・・・・?」
どれぐらい眠っていたのだろう。
気がついたら外はもう真っ暗だった。
周りには誰もいない。
(やっぱり工藤君が来たのは夢だったのかしら・・・?
そうよね。来てくれるわけないじゃない・・・・・・・)
熱は引いたみたいだ。汗をかいてる。
ふと、自分の額に手を掛けた。
「熱冷まシート・・・?」
そんなもの自分で貼った覚えはない。
「灰原、具合はどうだ?」
「工藤君・・・・・」
(夢じゃなかったんだ・・・・!!)
「おかゆ作ってきたから、食えるなら食えよ」
「工藤君が作ったの?!」
「悪ぃーかよ!!」
恐る恐る口に運んでみた。
「・・・・・おいしい!!」
「当たり前だ!ずっと一人暮ししてたんだから・・・・」



なぜだか涙が止まらなかった。
(こんな優しくされたの何年ぶりだろう・・・?)
「灰・・・原?おい!どうしたんだよ?頭でも痛いのか?」
「ううん・・・違う、違うの・・・・」
(ヤダナ・・・・泣き顔なんてもう二度と見られたくなかったのに・・・・)
「そういえばお前、寝ているときも泣いてたぞ?なんかあったのか・・・?
(それも見られてたのか・・・・)



「灰原・・・熱は引いたみたいだな・・・?」
ふと、コナンが額に手をかけてきた。



名前を呼ばれるたびに、身体に触れられるたびに、
この人の存在が大きくなっていく・・・・
自分じゃどうしようもないくらい。




今のあたしの体温は・・・38℃。
このまま、ずっとずっと・・・・・・・