貨物列車の重さの制限・長さの制限
単線路線を貨物列車が走行する際に機関車が牽引できる最大重量や
行違い又は待避をするのに可能な最大の長さが決まっています。
今回、昭和30年代の資料が発掘されましたので横浜線に限定して説明いたします。
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#1 重さの制限
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線区別使用動力車形式表 東鉄編
昭和31年11月改正
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表1
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線区
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横浜
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<解説>
線路等級:国鉄は線路区間種別を5つに
区分して線路の強度に差をつけて列車が
線路上を運転する場合に最高速度が
定められています。
横浜線は乙線ですので
電車:95km/h
その他の列車:85km/h
と最高速度が定められています。
乙線は
軌条の大きさ:37kg軌条
道床の厚さ:200mm以上
と基準が定められています。
C58型蒸気機関車の横浜線内の最高速度は
85km/hとなります。
昭和54年改訂14版「運転取扱基準規程解説」より
一部引用しました。(※昭和31年ではありません
ので一部数値が変更している可能性もあります)
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区間
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高島-八王子
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線路等級
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特甲
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甲
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|
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乙
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○
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丙
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簡易
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機関車
形式
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D51
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C58
|
◎
|
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C57
|
|
|
C56
|
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8620
|
○
|
|
6760
|
○
|
|
C11
|
|
|
C10
|
|
|
C12
|
|
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DD11
|
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※C58型蒸気機関車 最大けん引力:1097馬力 最大速度: 95km/h
線路等級:現在は1等級〜4等級に分類されています。
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横浜線の線路等級は乙線ですが、
この等級によって入線できる機関車や
最高速度等が規定されます。
参考として、他の線路等級は
特甲線:保土ヶ谷〜国府津〜早川
甲線:品川〜新鶴見
乙線:新鶴見〜鶴見
丙線:茅ヶ崎〜橋本
などの路線があります。
横浜線 高島-八王子間は
横浜機関区の蒸気機関車が担当していました。
C58・8620・6760型蒸気機関車が活躍し特にC586・C58177が大活躍したそうです。
(表1参照)
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では機関車は、どの位の重さまで牽引できたのでしょうか?
それは牽引定数で表されています。
では牽引定数とは?
牽引定数は各機関車の種類ごとに・各区間の最急勾配ごとに・速度種別ごとに規定されています。
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機関車牽引定数表
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表2
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最急勾配
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標準勾配
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D50・D51
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9600
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C58
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C10
注
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C12
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EF51
|
ED16
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通貨丙B
|
通貨丙C
|
停貨丙C
|
通貨丙B
|
停貨丙C
|
通貨丙B
|
通貨丙B
|
停貨丙C
|
通貨丙B
|
停貨丙C
|
通貨丙B
|
停貨丙C
|
通貨丙B
|
停貨丙C
|
|
東神奈川・長津田
|
10.0
|
10.0
|
75
|
85
|
85
|
55
|
63
|
55
|
35
|
37
|
28
|
36
|
|
|
10.0
|
6.8
|
|
長津田・橋本
|
10.0
|
10.0
|
75
|
85
|
85
|
55
|
63
|
55
|
35
|
37
|
28
|
36
|
70
|
70
|
70
|
70
|
|
L
|
-
|
95
|
95
|
95
|
80
|
80
|
80
|
80
|
|
橋本・八王子
|
10.0
|
6.4
|
95
|
95
|
95
|
70
|
70
|
70
|
45
|
47
|
35
|
42
|
80
|
80
|
80
|
80
|
|
10.0
|
10.0
|
75
|
85
|
85
|
55
|
63
|
55
|
35
|
37
|
28
|
36
|
70
|
70
|
70
|
70
|
|
注)C10:C10・C11・8620・C50共通
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解説
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「牽引定数」とは、速度種別に応じて、機関車、電動車又は
気動車(以下「動力車」という)が牽引できる車両の重量を
換算車両数で表したものをいう。
牽引定数:動力車(機関車)がある区間で、停止した位置から発車し、
ある一定速度で牽引できる列車重量(牽引重量)の事で列車重量
10トンを1両に換算し、これを何両牽引できるかを両数で表した定数。
上り勾配の大きさなどによって変わってくる。
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”通貨丙B”は速度種別で、組成車両による速度名称と査定勾配上の均衡速度による記号(表3参照)とで構成されています。
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速度名称
|
適 用
|
通貨
|
貨車のみ、又は貨車とその他の車両とで組成した列車に適用する。
|
停貨
|
貨車のみ、又は貨車とその他の車両とで組成した列車で
停車を原則とするものに適用する。
|
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「通」:通過駅が存在する列車。 全駅に停車する場合は「停」になります。
貨物列車の場合は「貨」となります。
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|
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査定勾配における均衡速度を標準として
次の記号を速度名称の次位に附する。
(イ)蒸気列車 b,混合列車、貨物列車
査定勾配上の均衡速度による記号
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表3
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均衡速度(Km/H)
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記号
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甲
|
乙
|
丙
|
丁
|
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査定勾配
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A
|
B
|
A
|
B
|
A
|
B
|
C
|
A
|
B
|
C
|
|
8‰
|
|
|
22
|
20
|
19
|
|
10‰
|
|
28
|
26
|
24
|
22
|
20
|
19
|
18
|
|
※速度記号は、列車の性能に応じて査定勾配における均衡速度で表します。
均衡速度:速度制限等を考慮しない場合の最高速度
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C58の東神奈川・長津田間を例にして解説します。
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表2より C58 通貨丙B 東神奈川・長津田間 最急勾配10‰ 牽引定数55
丙Bは表3より査定勾配10‰の均衡速度は19km/h
となっていますので
*****
C58型蒸気機関車が東神奈川・長津田間を走行する場合
| <<重さの制限>>
10トン換算の車両(貨車)を最大55両(550トン)牽引可能
|
途中駅全駅通過した場合時速19kmで運行できる。
東神奈川・長津田間は17.9kmなので550トン牽引した場合に
時速19kmですので所要時間は約1時間になります。
あくまでも紙上の計算で昭和31年のデータです。
注意:55両(分の長さ)牽引できるという意味ではなく
あくまでも1両10トンの貨車を55両分550トン牽引できるという意味です。
長さは、停車駅の最短の有効長にて決定されます。
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東神奈川・高島間の牽引定数を示します。
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表4
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機関車名
|
D50・D51
|
C58
|
C50・8620
C10・C11
|
2120
|
C12・C56
6760
|
|
最急勾配
|
標準勾配
|
停貨丁B
|
|
東神奈川・高島
|
3.3
|
L
|
95
|
75
|
50
|
38
|
38
|
|
7.6
|
1.3
|
参考データ
|
205系
|
Tc・T’c
|
M
|
M’
|
T
|
|
予定重量(t)
|
26.5
|
34.9
|
36.2
|
24.5
|
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横浜線205系1編成:TcMM'TMM'T'Tc'=245トン
|
|
横浜線205系2編成:TcMM'TMM'T'Tc'+TcMM'TMM'T'Tc'=490トン
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C58型蒸気機関車は横浜線205系2編成を牽引可能だった
|
|
#2 長さの制限
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では昭和31年頃、横浜線貨物列車の連結両数の長さ制限は何mだったのでしょうか?
それを解く鍵は
昭和36年の駅構内詳細配線図
にありました。
恐らく昭和31年と36年の駅形態に変化がないものと思われますので、
この配線図をもとに考えてみましょう。
車両接触限界標識から出発信号機までの長さを、「有効長」
といいますが各駅の有効長を下表に示します。
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|
各駅の有効長
|
|
八王子
|
下1番線
|
373m
|
|
片倉
|
下本線
|
395m
|
|
相原
|
上本線
|
364m
|
|
橋本
|
中線
|
347m
|
|
相模原
|
|
410m
|
|
渕野辺
|
上1番
|
391m
|
|
原町田
|
上1番
|
386m
|
|
長津田
|
|
381m
|
|
中山
|
中線
|
394m
|
|
小机
|
|
363m
|
|
菊名
|
2番線
|
559m
|
|
大口
|
|
300m
|
|
昭和36年駅構内詳細配線図より
|
|
|
東神奈川〜高島間は昭和34年4月に廃止していますので
昭和36年の東神奈川駅構内配線図は使用できませんが
大正7年12月の配線図より
直接、高島に行ける配線なので有効長は、かなり長いと推測されます。
大口は行違い又は待避をしないで通過した可能性が高く
橋本の347mが一番短いので
<<長さの制限>>
横浜線貨物列車の連結両数の長さ制限は347m。
|
注意:347mの貨物列車が走行したということではありません。
途中駅で貨物扱いせず通過ならば
八王子の373mが最大になります。
ちなみに
205系は約20mなので8両編成で160m。
2005年4月に走行した205系16両編成で320m。
C58型蒸気機関車の長さは18.3mですので
最大で8mの貨車を41両分牽引できることになります。
(全長 347m)
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では、一体・実際の最大編成は何両だったのでしょうか?
大正12年9月関東大震災の際に
42両牽引
していた貨物列車が
脱線したという記録があります。
大正12年9月 関東大震災
横浜線の被害状況
仮に全両8mの貨車として計算すると
C58+8m×42両=えーと む・む (-_-;) (-_-;) んーー
この時(大正12年)橋本の配線図には有効長の記載がありませんが昭和36年より長いかと (^_^;)
あるいは橋本にて待避がなかったのではないかと・・・・。 (^_^;)
※残念ながら昭和34年頃の貨物の時刻は不明です。
武藤謙二様ご提供の資料より作製いたしました。
◆◆参考にこの頃の電車時刻表を示します。◆◆
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|
04
|
53
|
|
05
|
20 45
|
|
06
|
15 30 56
|
|
07
|
06(中) 25 50
|
|
08
|
20 50
|
|
09
|
15 40
|
|
10
|
04 30 50
|
|
11
|
20 45
|
|
12
|
10 35
|
|
13
|
00 25 50
|
|
14
|
15 40
|
|
|
|
15
|
05 30 55
|
|
16
|
20 45
|
|
17
|
10 26 50
|
|
18
|
16 40
|
|
19
|
03 30
|
|
20
|
00 30
|
|
21
|
05 41
|
|
22
|
10 45
|
|
23
|
20
|
|
24
|
00(橋)
|
|
|
|
|
|
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昭和33年10月11日改正
日本国有鉄道(国鉄)横浜線時刻表(昭和34年4月号より)
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