美味しい梅干しの作り方
戸塚 寛
JA1PYP
@材料の入手
趣味で漬けるのですから和歌山県南部産の「木成り完熟4L」が良いでしょう。JAのインターネット販売で入手出来ます。06年は10Kg箱が8,000円でした。梅干しはこの完熟度が大切です。青梅を使用する場合水に数時間つけてあく抜きするのですが 黄色い梅ほどあく抜き時間を少なくします。私はあく抜きを省略します。 そのため、クール宅配便で送られてきた梅を、蒸れないように段ボールから笊に移し、 風通しの良い場所で、「木なり完熟」を更に熟すまで様子を見ます。
今回20Kg漬けましたが樽は2ケ用意し、赤くなっているのを選別して1回漬け、日を一日ずらして2回目を漬けました。
 
A副材料
35°の焼酎と粗塩です。
 
B仕込みその1
へ た取りは水につけた後の方が取れやすい(取りやすい)が、今回は水に漬けないので最初の作業になります。楊子でも何でも良いですが楊子はすぐ先が鈍りま す。私は太めの竹串を使用しています。太めというのは焼き鳥の竹串ではなく鮎の塩焼きに使う方です。ナイフまたは包丁で先を尖らしておきます。梅干し作り で一番退屈な作業です。2、3人でやると楽でしょう。容器は20Lのポリ容器が梅10Kgには最適です。 沢庵はビニール袋を介して漬けますが、梅は黴びたときの始末が悪いので直接樽に漬けます。故に洗剤とスポンジできれいに洗い、日光消毒します。漬けるとき は更に焼酎で洗い、アルコールスプレーで消毒します。落とし蓋も消毒します。
通常あく抜き後、笊に取って水切りし布巾で綺麗に拭いて水気をとります。この面倒な作業を省き梅の汚れも取る為に考案したのが蔕を取った梅を焼酎で洗う方法です。
塩を樽の底に振り入れ、洗った梅を並べ塩を振りまた洗って梅を入れ、塩振りを繰り返します。(容器と材料のバランスが良いでしょう)
このとき梅が焼酎で濡れていると塩がよく塗(まぶ)さる感じがします。よく本に出ている「最後に焼酎をかけ廻す」だけ、より水が早くあがる気がします。もちろん呼び水としての焼酎も入れます。焼酎の後に多めに残しておいた塩を全部投入します。早く水が上がります。
後は梅の2倍の重しをして、新聞紙で埃を防ぎます(蓋は閉まらない)。このときの注意は、おとし蓋のすぐ上の重石(最終的に梅酢に直接触れる)は自然石を使わない方が良いと思います。綺麗に洗えて消毒も出来る市販の重石を使います。
無 い場合は自然石をポリ袋に包みます。後は水があがるのを待つだけですが、一日で梅の上まで水が上がるでしょう。ここからが大変なのです。塩分10パーセン ト以下だとすぐ黴びます。毎日重石を外して樽を良く振ります。梅酢+焼酎の水面上部は塩分が非常に薄いので黴びるのです。塩分が均等になると言う目的意識 でこまめに揺すります。水が上がっても毎日良く観察して、ちょっとでも濁った感じがしたら、すぐ行動してください。陶磁器かホーローの鍋に梅酢を移し煮沸 消毒して浮いてきた灰汁を取り、冷ましてから笊に紙タオルを数枚敷き濾過しながら樽に戻します。金属の鍋は絶対に使わないようにしてください。10Kgの 梅で梅酢は2リッター以上出ますので、煮沸には深底のセラミック鍋が便利です。
この梅酢を出した状態の樽の中を良く観察すると梅と梅の間に溶けない塩が固まっています。塩が全部溶けていないと言うことです。ですから揺する作業をこまめに行います。濁る前に、面倒でも上記作業を行い、梅酢のない状態で梅の実を天地返しした方が確実です。
C仕込みその2
水 が上がって安定状態(そのまま白梅漬けで一夏、越せる状態)になったらなるべく早く赤紫蘇を投入します。ここで問題があります。東京近辺で縮緬赤紫蘇が出 回る時期は6月いっぱいまでです。木なり完熟梅の到着が6月末です。ですから紫蘇の下ごしらえは同時期に行います。赤紫蘇は1把150円程度で、10Kg の梅には10把使います。葉を毟ります。この作業が一番時間がかかります。(丁寧にやりすぎかも)
これをステンレスボールで水洗いします。 底に砂がたまらなくなるまで丁寧に洗ってください。無農薬の紫蘇は虫が付いていますが、虫も底に沈みます。ですから虫の発見のためにも少量ずつ処理してください。
次に笊に移して干してください。干からびるほど干す必要はありませんが水気はなるべく入れたくないので時々裏返して良く干してください。
サ ラダ用水きり器、布きんに包んで振り回す等ありますが生半可な嵩ではありません。時間はかかりますが天日干しが一番楽です。干し終わったらボールに移して 塩を振りかき混ぜて馴染ます。しんなりしたら両手で強く揉みます。作業を繰り返すと黒い灰汁が出てきます。団子状に絞り、灰汁を捨て再び塩を振り同じ作業 を繰り返します。塩揉みと言うかこの灰汁抜き作業は2回行ってください。
こ の紫蘇団子をビニール袋に入れ、冷蔵庫で保存します。白梅酢が安定したら樽から梅酢を別容器に移します。落し蓋を片手で押さえて実がこぼれないよう注意し ます。梅酢に紫蘇をばらしながら入れ、ビニール手袋をして紫蘇を搾り発色を良くします。梅酢を樽に戻して梅の上に紫蘇が均等にかぶさるように覆い落し蓋を して軽い重石をします。蓋をして冷暗所に保管します。
 
D仕込みその3
天日干しは梅干用ざるを使います。前述のざるは直径40cm程度の目の詰まった竹製のざるです。10Kgの梅に対して直径90cm程度の天日干しざるは3ヶ必要です。
なるべく梅と梅を離して並べます。土用干しと称しますが勤め人は天候も安定しているお盆休みが最適でしょう。 10Kgの梅を全部干せる超大型ざるも売ってはいます。
夏 の太陽ぎらぎらに最低丸二日は曝してください。逆に言うと何時干しても大勢に影響はありません。天気予報と相談して干し日を決めてください。干しの注意点 は干しはじめにまめに天地返しをすることです。果肉が笊にくっつき無理にはがすと皮が破れます。これは悲しい。梅酢は目の細かいざるで濾過し紫蘇をきれい に取り除きこの紫蘇も一緒に天日干しします。
そ のためのざるももうひとつ必要ですが、ざるがなければ紫蘇は保管しておき梅の後に干します。と言うのは梅は3日干せば充分ですが「ゆかり」を取るための紫 蘇干しは相当長い間干さないとカラカラになりません。手で掴むとぱらぱらになるほど干してミルサーで挽いてください。梅の天日干しに戻りますが最終日は夜 露に濡らすとしっとりした梅干が出来ると本には書いてありますが、怖くて出来ません。にわか雨が来たらお仕舞です。干した梅を梅酢に戻し落としふたをして ごく軽い重石をします。ガラスのお皿の様なもの。私はプレープフルーツ絞り器と耐熱ガラス製の食パン焼き容器を使っています。
干 からびた梅が梅酢を吸ってふっくらするために1ヶ月以上お好みで置きます。 最後に梅酢を取って甕などに本格保存します。すぐ食さないで半年以上置いた方が塩が甘くなって美味しくなります。梅酢は新生姜を漬けます。市販のドクドク しい赤ではない紅生姜(べにしょうが)が出来ます。その時注意したいのは生姜に脱色作用があるのか 漬け汁の色が薄くなります。綺麗につけるには梅酢を換えて二度漬けします。その他焼酎の梅酢割り(焼酎の水割りに梅酢を酢数滴落とす)、冬は効果大で、食 感?さっぱりのウガイ薬になります。
 
その他の解説
@仕込み時期
本 には6月上旬に下ごしらえと仕込み、6月下旬に紫蘇の下ごしらえと本漬け、7/20頃土用干し、それから2週間で食べごろと書いてあります。本文にも書き ましたが、現在は梅の種類が改良されたのかは不明ですが、良い梅が出回るのは6月下旬です。全部の出回り時期がずれるのなら良いのですがうっかりすると紫 蘇が入手できなくなります。その場合は北関東から東北のJAから入手できます。
実は本文の紫蘇の写真は縮緬赤紫蘇ではありません。あわてて入手した縮緬の根だけを水に漬けて休日まで持たせようと思ったのですが溶けて駄目になりました。写真は福島県川内村に在住の無線仲間である出戸さんに送ってもらったものです。
A材料の取捨
手 引書には水に漬けて灰汁抜きの段階で黒い斑点が1ケでも出たら捨てろと書いてあります。私流は水に漬けないので斑点は出ないのですが蔕を取るとき蔕の部分 に穴が開いているものは捨ててください。生産者もその分を見込んで出荷しています。ダンボールを注意してみると数パーセント余分の重量が記載されているは ずです。ケチらないことです。
B白梅酢の色付け
下ごしらえの紫蘇をガラス容器に入れ適量の白梅酢をかけ葉を軽くほぐしてから  この紫蘇を梅が隠れるように並べ色の付いた白梅酢も戻すとある手引書がありますが  これだとせっかくの大量赤紫蘇投入に対して梅の発色が薄いように思います。
C材料バランス
梅10Kgに対して
  焼酎 1000mg
  紫蘇 10束
  塩   1Kg(お好み)
  紫蘇のもみ塩 紫蘇葉の重量の6%
 (出展:村上昭子著 NHKきょうの料理シリーズ「村上昭子の漬物じょうず」)
D減塩
デパート等に売っている5%の梅干は樽ごと入れられる冷蔵庫があるなら可能で す。 梅酒用のガラス瓶で2kgほど漬けるのでしたら、下漬けで瓶をがんがん振れ ますから 相当な減塩は可能です。しかし減塩梅干は後で塩抜きしているものも多いよう です。
E変わり梅干
常温で長年持つのが保存食である梅干です。旨み調味料、水あめ、鰹節等加え て変り梅干を楽しむのであれば、天日干しの後の梅酢に添加し少量を冷蔵すればよい と思います。
F赤紫蘇の投入時期
本漬けの時期と言うことですが、すでに下ごしらえした紫蘇が冷蔵庫に保管さ れている訳ですから早いほうが良い。紫蘇を入れると塩分が増加するのか、紫蘇に殺 菌作用があるのか、紫蘇を入れてからはカビたことはありません。出回り時期が同じ ならいきなり本漬け(下ごしらえした紫蘇も塩と梅と同時に漬ける)の方法もありま す。上記の殺菌作用と矛盾するかも知れませんが、万が一、紫蘇までカビた時の始末 が大変です。
G勘所
スーパマーケットで梅干用の1kg袋が600〜800円(大きさによる)で 売っています。 梅干は熟した状態にばらつきのない材料を入手することが大切です。値 段はスーパマーケットの南部産2Lより、箱で10Kg買う最高級品の産地直送の方が安 価です。ですから「趣味で漬けるのですから和歌山南部産の生成り完熟4Lを使用」と 書きました。しかし自家用なら地元産の小ぶりな梅の箱買いの方が安いでしょう。と にかく完熟した梅を使うことです。
以上
 
 
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